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より、皆さんが考えた短編ストーリーを投稿してください。
ストーリーの内容は日記風の物やファンタジーなどジャンルは問いませんので、ご自由に物語を作り投稿してください。
公式サイト上で掲載をされたストーリーの1話に対して、1本の苗木を運営チームから『
地球緑化センター
』に寄付させていただきます。
オンラインゲーム『LEGEND of CHUSEN -誅仙-』を通じて集ったユーザー様と運営チームが協力し、世界にたくさんの花を咲かせましょう。
No.0002
2008-11-06 いざよい物語 第一章
ひな祭り さん
月が神無火山(かむなびやま)の頂に傾くにつれて、辺りはだんだんと静寂を増していた。
山道に落ちはじめた枯葉を踏む音だけがサクッサクッと耳に響き、吐く息は白く体の後ろを流れていく。
待ち合わせの場所まではあと5分程で着くというところで、僕は足を止めた。
どうしても、もう一度考えたいことがあった。彼女に会うのはひと月振りなのだが、
本当の彼女に会うのは3年振りなのだ。
僕たちの住む世界「シャンティカム」では、人々はみな生まれながらに"分魂"を持っている。
"分魂"とは、実体のない「もう一人の自分」――。意識の集合体ともいえる。思考や性格、
姿見や発する声など、ほとんどが全く自分と同じものだが、ただ触れることは出来ない。
自分の意思で自由自在に操ることが出来、遠くの場所へ分魂を飛ばして色々なことを見聞きすることが出来る。
なぜ、このようなものを持って生まれるのかは解明されていないが、この世界では人である以上これは当たり前のものなのだ。
ひと月前に会ったのは、彼女の分魂だった。
3年前、近隣の村々を大きな地震が襲い、その混乱の最中、彼女は忽然と姿を消した。
被害に遭ってもう死んでしまっていると言う者が大半ではあったが、遺体も発見されず、
その行方は誰もわからなかった。僕は何ヶ月も彼女を探し歩いたが、とうとう見つけられないまま3年の月日が過ぎてしまっていた。
その彼女の分魂がひと月前に僕の前に現れ、今夜あの場所で会うことを懇願してきた。
なぜ村を出たのか、どうしても何も言わずに行ったのか、聞きたいことは山ほどあったが、
憂いと絶望感をふくんだ消えるような笑顔と、「僕」を呼ぶあの声が完全に思考を停止させ、
僕はただ彼女の申し出を聞くことしか出来なかった。
なぜ「僕」を呼んだのか――。
あの消えそうな悲しい笑顔を思い出すと、今夜あの場所へ向かうことで、引き返せない
何かが待っているような気がした。しかし僕が「僕」である以上、何が起きているのかきちんと
確かめなければならない。そしてまた、彼女に戻ってきて欲しかった。胸の奥に潜むその思いが、
再び僕の足を動かしはじめた。
鼻の奥に潜り込むように、金木犀(きんもくせい)の花の香りが辺りに漂い始める。
待ち合わせの場所、僕らの思い出の金木犀の木の下に、
秋の冷たい夜風から身をかばうように、肩をすくめた彼女の姿が見えた。
「あれからまだ、ひと月しか経ってないのに、随分久しぶりに感じるわ。」
数メートル離れた僕をみつけると、彼女から先に声をかけてきた。
「こうして実体で会うのは3年振りだろう? 会えて嬉しいよ、瑠璃。」
瑠璃は、子供の頃からそうしたように軽く握った左手を鼻の上にあてて、フフッと小さく声をたてて笑った。
「やっぱり怒らないのね。 連絡もせずに消えたのに・・・。」
「怒ってるよ。 ただ今は、君に会えて本当に嬉しいんだ。」
僕は歩幅を縮めてゆっくりと歩きながら、瑠璃に手の届く距離まで来た。瑠璃は優しくニコッと微笑むと、金木犀の木に向かい手を触れた。
「この木・・・まだここにあったのね。 村長さんが、山道の真ん中に立っていて邪魔だから抜いてしまおうって言っていたから、もうないのかと思ってたわ。」
「この木は道しるべになるからね。 村のみんなで相談して残すことに決まったんだ。
ところで、瑠璃・・・。 君はこの木が見たくて戻ってきたの?
いつも大事なことで話をそらすのは、昔から変わらないクセみたいだな。」
少しスネたような言い方をすると、また瑠璃がフフッと笑った。
「あなたが私に、何を言って欲しいのかわかるからよ。
そのスネた声が聞きたくて、つい意地悪になってしまうの。 ごめんね。」
いたずらな笑顔を向けてそう言いながら、瑠璃は僕の前に歩みでてそっと僕を抱きしめた。
「私もずっと会いたかったわ。 ヤマト・・・。」
僕は瑠璃の背中に両腕を回しながら、とてつもない悲しみに襲われていた。
いま目の前にいる瑠璃は、僕の知っている瑠璃でありながら、僕の知らない瑠璃なのだ。語る声も思い出も、なにひとつ違わないのに、たったひとつの違和感が全てを残酷に壊していく。
ひと月前、瑠璃の分魂が現れた日から、その違和感は始まっていた。
僕の名前は慈英(じえい)。
彼女の呼ぶ、ヤマトではないのだ――。
"分魂"を持つ人々が暮らす世界――シャンティカム。
3年前の大地震と恋人の失踪。そして再会。
慈英と瑠璃の間に存在する人物"ヤマト"とはいったい誰なのか。
たどり着いたその答えは、シャンティカムに秘められた全ての謎を解き明かすものだった。
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